撤退体験談・異業種転職事例

公認会計士試験を撤退し、不動産会社の法人営業へ。「数字に強い営業」として評価された転職体験談

短答式3回目の不合格で、限界を感じた

予備校の答練の成績が伸び悩み始めたのは、受験2年目の後半だった。3年目に入っても状況は変わらず、 同じ予備校の同期が次々と短答式を突破していく中、Kさんは焦りと自己否定の感覚を強めていったという。

「今までの2年半が無駄になる」という恐怖が一番大きかった、とKさんは振り返る。 それでも、生活費の不安と将来設計への焦りが重なり、3回目の短答式不合格を機に撤退を決めた。

転職活動で直面した「受験期間の説明」という壁

撤退を決めた後、最初に直面したのは職務経歴書と面接で受験期間をどう説明するかという問題だった。 「受験に専念していました」とだけ書くと、面接官によっては「逃げてきた人」という印象を持たれることもあったという。

Kさんが工夫したのは、撤退そのものを一つの意思決定として説明する方法だった。 「なんとなく続けられなくなった」ではなく、「答練の成績推移」「生活費とのバランス」 「将来設計への影響」を具体的な判断材料として挙げ、何を根拠にどう判断したかを話すようにした。 この伝え方に変えてから、面接での反応が変わったと感じている。

現在の仕事と、受験経験の活き方

現在は不動産会社で法人営業として働いている。未経験枠での入社だったが、 会計・数値の基礎知識があることは、顧客への収支シミュレーションの説明で信頼を得る材料になっているという。

また、長期間にわたる学習計画を立てて実行し続けてきた経験は、営業目標への向き合い方にそのまま活きていると感じている。

「陽キャの営業マン」でなくても数字を残せる理由

優秀な営業パーソンというと、よく笑い、明るく、人当たりの良い、いわゆる「陽キャ」なタイプを 思い浮かべる人が多いかもしれない。Kさん自身も、ある程度の人当たりの良さやコミュニケーション力は あると思っているが、「いかにも営業マン」というタイプではないという。

それでも一定の数字を残せている理由を、Kさんは会計士受験の経験に見出している。

「一番大きいのは、日本経済の実態やインフレとは何か、なぜ今、不動産を買うことにメリットがあるのかを 丁寧にわかりやすく伝えられる知識があることだと思っています。実際に不動産の現場で働いてみると、 インフレという一つの経済的事象を完璧に説明できる営業パーソンは、意外と多くありません」

会計士試験の学習範囲には、簿記・財務会計だけでなく、経済全体の動きを読み解く視点も含まれている。 ニュースで語られる程度のインフレの話であれば、少し社会ニュースを読むだけで理解し、 自分の言葉で説明できるという。

「明るく話しかける力よりも、なぜこの商品を買う意味があるのかを筋道立てて説明できる力の方が、 少なくとも自分の営業スタイルには合っていました」

未経験でも不動産営業で評価された理由

不動産営業は、宅地建物取引士等の資格がなくても未経験枠での採用が比較的多い業界だが、 入社後は物件の収支シミュレーションやローン返済計画など、数字を使って顧客に説明する場面が多い。

Kさんの場合、会計士試験で培った「数字を分解して説明する力」が、まさにこの部分で評価された。

「宅建や不動産の実務知識は入社後の研修や現場で身につけられる、という会社が多かった。 一方で、初期投資の回収シミュレーションを顧客にわかりやすく説明する力は、 会計・ファイナンスの基礎を理解しているかどうかで差が出ると面接官に言われた」

受験経験を営業職で活かしたい人へ

  • 資格・実務経験ではなく「数字の説明力」を軸に伝える: 宅建・簿記等の資格がなくても、 決算書や収支計画を読み解ける力自体が評価対象になる場面は多い
  • 「陽キャらしさ」がなくても、知識に基づく説明力で信頼を得るスタイルは十分に成立する: 社交性の高さだけが営業の武器ではない
  • 学習計画の継続力を、営業目標への向き合い方に翻訳する: 「毎日机に向かった」ではなく、 「目標から逆算して計画を立て、進捗を見直しながら実行し続けた」という言葉に変える
  • 業界特有の実務知識(宅建・重要事項説明等)は、入社後に学べる前提の求人も多い: 未経験可の求人条件を事前に確認しておくと選考の見通しが立てやすい

受験経験を職務経歴書・面接の言葉にどう翻訳するかについては、 「受験経験の翻訳」カテゴリーの記事も参考にしてほしい。

今、迷っている人へ

「撤退を決めた瞬間は、今までが無駄になるという感覚が強かった。でも実際には、数字に強いという印象は 転職市場でも評価されたし、今も会計士受験で身につけた勉強のやり方がそのまま仕事の進め方に活きている。 続けるか辞めるかで迷っている段階なら、まず今の自分の状態を誰かに話してみることをすすめたい」

受験期間
受験専念3年(うち短答式受験3回)
撤退時期
3回目の短答式不合格後
現在の仕事
不動産会社の法人営業(未経験枠での入社)

※個人が特定されないよう、複数の相談事例をもとに再構成しています。

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